テレビの仕事を長くやってきました。
ギャラクシー賞なんていう、身に余るような賞をいただいたこともあります。
ドキュメンタリーの現場で、何千時間も「人間」を追いかけてきました。
そんな僕が、週末の河川敷では、一人のサッカー少年の父親になります。
息子のスパイクについた泥を落としながら、試合を眺めていると、仕事で培ってきた「人を見る目」が、思いがけず顔を出すことがあります。
そこには、どんな名脚本家にも書けないような、かっこわるくて、愛おしい「事件」が転がっています。
そして、子どもが成長していく姿を、どう見るか。
親の「見る目」も問われているような気がします。
二人のコーチを見ていて、考えたこと
息子のチームには、対照的な二人のコーチがいます。
一人は、20代のMコーチ。
いわゆる「勝負」に強い指導者です。
教え方は厳しく、試合に出る子と出られない子の線引きもはっきりしています。
その指導もあって、彼が担当する高学年のチームは、とても強い。
お父さんたちからも、
「Mコーチなら強くなれる」
と期待されています。
もう一人は、40代前半のTコーチ。
いつもニコニコしていて、腰が低い。
「パスが大事だよ」
などと子どもたちに教えるのですが、言葉が少し回りくどくて、伝わりにくいこともあります。
彼が担当する低学年チームは、なかなか勝てません。
僕の息子も、Tコーチに教わっています。
まだレギュラーとは言えません。
それでも、息子はいつも楽しそうに練習に行きます。
酒の席では、こんな声が聞こえてくることもあります。
「Tさんの指導じゃ、いつまでも弱いままですよね」
確かに、そうなのかもしれません。
スポーツなのだから、勝ったほうがいい。
強くなったほうがいい。
それも、間違いなく大切なことです。
でも、僕は少し違うことも考えるようになりました。
「勝つ」の、その先にあるもの。
僕が息子をこのチームに入れたのは、チームを勝たせるためだったっけ?
そう考えると、答えは違います。
一番大事なのは、
息子が、このチームでどう育っていくか。
そこです。
僕がTコーチを信頼している理由があります。
Tコーチは毎回、誰よりも早くグラウンドに来ます。
そして、お父さんたちと一緒に重いゴールを運び、練習の準備を手伝います。
もちろん、コーチにもそれぞれの考え方があります。
勝つことを優先する指導もあれば、子どもたちがサッカーを好きになることを優先する指導もある。
どちらが絶対に正しい、という話ではありません。
ただ、Tコーチが黙々とグラウンドの準備をする姿を見ていると、
言葉だけでは伝わらない「誠実さ」も、子どもたちは見ているんじゃないか。
そんなことを思います。
「1年前より、強くなりましたね」
ある日のことです。
試合に負けて、しょんぼりしている息子を遠くから見ていました。
するとTコーチが、いつもの笑顔で僕のところにやってきました。
「息子さん、1年前と比べると、ディフェンスのあたりがぐっと強くなりましたよね」
「本当に、成長していますよ」
胸の奥が、ぽわっと温かくなりました。
ああ、そうだよな。
僕も、まったく同じことを思っていたんです。
スコアボードには出ない。
でも確かにある、1ミリの成長。
それを見つけて、自分のことのように喜んでくれる人がいる。
そのことが、親としてうれしかった。
少年サッカーで、親が見るべき3つのポイント
ここからは、実際に息子のサッカーを見ていて感じていることを整理します。
試合を見るとき、ぜひ「勝ったか、負けたか」以外にも目を向けてみてください。
① どんなプレーを選んだかを見る
試合を見ていると、どうしてもスコアが気になります。
でも、子どもを見るときは、
「勝ったか負けたか」ではなく、「どんなプレーを選んだか」
にも注目してみる。
例えば、
強い相手に向かっていったか
逃げずにボールを受けようとしたか
失敗しても、もう一度プレーに関わろうとしたか
結果だけでは見えない部分に、子どもの成長が隠れています。
② 以前と比べて、何が変わったかを見る
もう一つ大切なのは、
「今できるか」ではなく、「前と比べてどう変わったか」
を見ること。
例えば、
相手との当たりが強くなった
ポジションを意識するようになった
周りを見るようになった
ボールを受ける回数が増えた
こうした変化は、試合の勝敗には直接表れないことがあります。
でも、それこそが成長です。
③ 結果ではなく、過程を言葉にする
そして、試合後の親の声かけも大切だと思います。
負けたとき、
「なんで負けたの?」
と言うのではなく、
「どんなプレーをしようとしたの?」
と聞いてみる。
さらに、
「あの場面、ボールを取りにいったの良かったね」
「前より相手に強く当たれるようになったね」
と、具体的な行動を言葉にしてあげる。
子どもにとって、
「自分のプレーをちゃんと見てくれている」
という感覚は、大きな支えになるのではないでしょうか。
面接官として、子どもを見ていて思うこと
僕は仕事で、アナウンサー試験の面接官をすることもあります。
面接で見ているのは、華やかなパフォーマンスだけではありません。
その人が、
どんな経験をして、何を考え、そこから何を学んできたのか。
むしろ、そういう部分を見ます。
結果だけでは、その人のすべては分かりません。
これは、子どもにも同じことが言える気がしています。
サッカーで何点取ったか。
試合に勝ったか。
レギュラーだったか。
もちろん、それも大事です。
でも、それだけでは見えない成長がある。
勝つことは大切。でも、それだけではない
勝つことは、良いことです。
努力して強くなることも、素晴らしい。
僕は、息子に「勝たなくていい」と言いたいわけではありません。
できるなら、勝ってほしい。
強くなってほしい。
でも、それだけで子どもが成長するわけではないと思っています。
負けた試合の中で、
「前よりできるようになった」
「今日は逃げなかった」
「一生懸命走った」
そんな小さな変化を、誰かが見つけてくれていた。
その経験は、きっとサッカー以外の場所でも、その子を支えてくれるはずです。
まわりくどく見えるTコーチの指導を、僕はもう少し信じてみようと思っています。
そして、息子が1年前より少しだけ強くなったことを、僕自身も見逃さないようにしたい。
河川敷のドキュメンタリーは、まだ続いていきます。

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