「今日どうだった?」では引き出せないサッカー少年の“言葉” 誰でもできる“考えさせ自分の言葉で表現させる”質問のコツ

“見る目”

ドキュメンタリー監督の質問術

少年サッカーをやっている子どもに、親は日々いろいろなことを聞きますよね。

「今日どうだった?」

「何がうまくいった?」

「どうしてあそこでドリブルしたの?」

「次はどうしたい?」

子どものプレーを見ていると、聞きたいことはいくらでも出てきます。

できれば、自分のプレーを自分で振り返ってほしい。

「ここが良くなかった」

「次はこうしてみよう」

そんなふうに、自分で考えてほしいと思う。

でも、実際に聞いてみると、なかなか思ったような答えは返ってきません。

「わかんない」

「普通」

「忘れた」

子どもだって、何を答えればいいのか分からなんでしょう。

親としては、もう少し話を聞きたい。

でも、

「なんであそこでパスしなかったの?」

「もっと相手を見た方がいいよ」

「こうすればよかったんじゃない?」

と、こちらから答えを教えてしまうのはNGなんです。

親が答えを言ってしまえば、その場では話が早い。

でも、それでは子ども自身が考える機会にならない。

では、どうすればいいのか。

親が答えを教えるのではなく、子ども自身に考えてもらう。

そして、自分の言葉で語ってもらう。

私はドキュメンタリー監督として、これまで多くの人にインタビューをしてきました。

政治家、スポーツ選手、一般の人。

その取材の中で、私自身が普段からよく使っている質問術があります。ちょっとご紹介します。


相手の見た景色を見ようとすること

あたかも自分が相手に乗り移ったように、相手の目線でその場面を見ることです。

相手が見た景色を、自分も見る。

そのとき、何が起きていたのか。

相手は何を見ていたのか。

何が起きようとしていたのか。

その瞬間、どんなことを考えていたのか。

できるだけ具体的に、自分の頭の中で再現する。

インタビューでは、

「そのとき、どう感じたんですか?」

という質問をすることがある。

ただ、この質問も、相手が見た景色を自分がどこまで理解しているかによって、その後の会話は変わってきます。

自分が相手の見た景色を頭の中で再現できていれば、次の質問も変わる。

「そのとき、右側には誰がいました?」

「相手はどんな動きをしていました?」

「その瞬間、最初に何を見ました?」

といった具合に、かなり具体的な質問になっていく。

答える側からしても、

「この人は、自分が見た景色を分かってくれている」

と感じれば、話しやすくなる。

すると、話が具体的になる。

私は、この「憑依」という質問術を、ときどき息子に使っています。


練習試合の前、息子に聞いた

ある練習試合の前。

息子に、こんな質問をした。

「今日はどんなプレーをしたい?」

よくある光景です。すると、息子はこう答えました。

「パスを出すふりをして、切り返して、相手をかわして、縦に突破するドリブルをしたい」

なるほど。

ただ「ドリブルで相手を抜きたい」ではない。

自分の中に、やりたいプレーのイメージがある。

ここからが出番です。

息子がそのプレーをしている場面を、頭の中に思い浮かべる。

相手は近く寄ってくる。

息子はボールを持っている。

パスを出そうとしているように見せる。

相手がそれにつられる。

そこで切り返す。

そして、縦へ抜ける。

その場面を頭の中で一つずつ再現しながら、質問を続けていく。

「それを成功させるには、まずはどうすればいいと思う?」

息子は考えて、

「パスを本当に出すように見せる」

と答えます。

そこで、少し時間を巻き戻して、さらに聞きます。

「パスを出すふりをするってことは、相手をどうすること?」

「だます」

では、

「じゃあ、どうしたら相手は本当にパスだと思うかな?」

「本当にパスを出すように見せる」

ここで終わらない。

そのプレーを頭の中でさらに再現する。

相手をだますためには、息子は相手を見なければならない。

では、どこを見ている?

「そのとき、君はどこを見ていればいいかな?」

息子は、

「相手を目の端で見ながら、パスを出す相手をしっかり見る」

と答えた。

なるほど。パスを出す仲間をしっかり見ながらパスをだすフリをする…騙されそうだ。

さらに、時間を巻き戻してみます。

そうなると、ボールばかり見ているわけにはいかない。

ボールはどうすればいい?

「ということは、ボールはあまり見られないね。ボールはどこに置いておく?」

「利き足の近く」

「なんで?」

「すぐにアウトサイドで蹴ってドリブルできる位置だから」

ここまで来ると、最初に息子が言った

「パスを出すふりをして、切り返して、相手をかわして、縦に突破する」

という一つのプレーが、かなり具体的になってきた。

さらに、時間を巻き戻して、シーンをイメージします。

パスを出す仲間をしっかりと見るためにはどういう姿勢がいいのか。

「そもそも相手をしっかり見るには、どんな姿勢だったらいい?」

息子は、

「まっすぐ。背筋はまっすぐ」

と答えた。


私は、答えを教えていない

この会話で、私が息子に

「相手を見ろ」

「ボールは利き足の近くに置け」

「背筋を伸ばせ」

と教えたわけではない。

もちろん、私の中にはある程度の答えがある。

ドキュメンタリー監督として、人の動きを観察してきた経験もある。

サッカーを見ていて、

「ここは相手を見るべきだ」

「この位置なら次のプレーに移りやすい」

と思うこともある。

でも、この場面では、それを直接言わない。

息子が自分で考えて、自分の言葉にするように質問する。

大事なのは、ただ「なぜ?」を繰り返すことではない。

相手の答えを聞いて、その答えから次の質問をつくる。

そのためには、質問する側が頭の中で、そのプレーを一緒に見ていなければならない。

息子が「パスを出すふりをする」と言ったら、その先を想像する。

相手はどこにいる?

息子はどこを見ている?

ボールはどこにある?

次にどちらへ動く?

そのとき身体はどうなっている?

そうやって、息子に「憑依」しながらプレーの中に入り込んでいく。


「考えろ」では、なかなか考えられない

子どもに、

「もっと自分で考えなさい」

と言うのは簡単だ。

でも、考えろと言われても、何をどう考えればいいのか分からないことも多い。

だから、質問で一つずつ階段をつくる。

「どんなプレーがしたい?」

↓

「それを成功させるには?」

↓

「相手をどうする?」

↓

「どうしたら相手はだまされる?」

↓

「そのとき、どこを見る?」

↓

「ボールはどこに置く?」

↓

「なぜ?」

↓

「どんな姿勢がいい?」

こうやって、一つのプレーを細かく分解していく。

すると、最初はぼんやりしていた「やりたいプレー」が、具体的な映像になっていく。

そして、その映像を言葉にすることで、本人の頭の中にも残っていく。

これが、私の質問のコツです。


サッカーの答えではなく、「頭の中」を記録する

少年サッカーでは、どうしても結果が残る。

ゴールを決めた。

アシストした。

試合に勝った。

リフティングが100回できた。

キックが何メートル飛んだ。

もちろん、それも大切だ。

でも、親として残しておきたいものは、それだけではない。

9歳の息子が、そのとき何を考えていたのか。

どんなプレーをしたいと思っていたのか。

相手をどうやってだまそうとしていたのか。

ボールをどこに置こうと考えていたのか。

そんな「頭の中」も、できれば記録しておきたい。

takeisan

ギャラクシー賞等受賞・ドキュメンタリー監督。アナウンサーなどの採用面接官も務める。人口40万の市大会3位のMF。週末は8歳の息子を追う「少年団パパ」。独自の観察眼で、少年団サッカーと将来の「選ばれる力」の意外な関係を綴ります。

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