パパが子どもに話す、ちょっと不思議な話②夜の森から聞こえていた音の話

パパが子どもに話す、ちょっと不思議な話

 

パパね、子どものころ山奥に住んでたのよ。

 

山道をずっと登っていくと、一番上に家があってね。

それがパパの家だった。

 

だから家の裏は全部山。

 

昼間はよく遊びに行ってたよ。

 

タケノコ掘りもやったし、

崖のぼりもやった。

 

山犬に遭遇したこともあったし、

石を積み重ねて作られた小さなピラミッドみたいなものもあった。

 

昼間は楽しい場所だった。

 

でもね。

 

夜になると全然違うのよ。

 

山奥だから、外灯なんてほとんどない。

 

あるのは家の中の蛍光灯の明かりくらい。

 

だから夜になると、

本当に真っ暗闇になるの。

 

するとね、

夜になると森の中から変な音が聞こえてくることに気づいたのよ。

 

不思議なんだけど、

小学校3年生くらいまでは全然気にならなかったんだよね。

 

そんな音がしてることすら知らなかった。

 

でも4年生くらいになると、

「あれ?」

って思うようになった。

 

なんか変な音が聞こえるなって。

 

ずっと遊んでいた森なのに、

夜になると昼間とは全然違う顔を見せるのよ。

 

例えばね。

 

「キーッ!」

 

っていう音。

 

サルが鳴いたみたいな声なんだけど、

その辺にサルはいない。

 

だからサルじゃないはずなんだよね。

 

でも、

「キーッ!」

って鳴くの。

 

頻繁じゃないのよ。

 

1日に1回くらい。

 

忘れたころに、

「キーッ!」

って。

 

あとはね、

もっと不思議な音もあった。

 

ファミコンのゲームみたいな音。

 

森の中から、

 

「ドレミファソラシド〜

ドレミファソラシ〜」

 

って聞こえるの。

 

本当に。

 

周りに家なんてほとんどないし、

最初は家の中の何かが鳴ってるのかなって思った。

 

でも違う。

 

夜中の1時とか2時とか。

 

みんな寝静まった時間に、

森の中からうっすら聞こえてくるのよ。

 

あまりにはっきり聞こえるから、

 

「ねえ、聞こえる?」

 

って家族に聞いたの。

 

するとね、

 

「聞こえない」

 

って言うのよ。

 

みんな。

 

だから、

あれ?

パパだけに聞こえてるのかなって。

 

耳鳴りかなって思ったこともあった。

 

でも耳は別に悪くなかったし、

結局あれが何だったのかは今でも分からない。

 

 

あとね。

 

ちょっと怖かったのが、

子どもの笑い声。

 

小学校1年生とか2年生くらいの子どもが遊んでるみたいな声。

 

 

キャッキャッって。

 

 

最初は、

誰か遊んでるのかなって思った。

 

でも時計を見ると、

夜の8時とか9時なのよ。

 

いやいや。

 

こんな時間に森で遊ぶ子いないだろうって。

 

聞き間違いかなって思うんだけど、

確かに森の方から聞こえてくる。

 

そういうことが何回もあった。

 

 

それでね。

 

昼間に森へ行くのが少し怖くなっちゃったの。

 

 

オバケがいるのかな。

 

妖怪かもしれないな。

 

 

そんなこと考えるようになってさ。

 

 

そうしたら、

2つ上の兄ちゃんとか、

3つ上のいとこが、

こんな話をしたのよ。

 

 

「あの石積んであるやつ、

昔の人の墓らしいよ」

 

 

戦で死んだ侍の墓だとか、

そんな話だったかな。

 

 

もうね。

 

それ聞いたら近づかなくなった。

 

 

それまで悪ガキだったからさ。

 

石を蹴飛ばして遊んでたりしたのよ。

 

今思うと、

ずいぶん罰当たりなことしてたなって思う。

 

でも、

本当にお墓だったのかどうかは今も分からない。

 

 

今はね、

高速道路ができて、

家の裏の山はほとんどなくなっちゃった。

 

だから、

あの森ももうないんだ。

 

 

でもね。

 

忘れられない音が一つある。

 

 

それも夜の森から聞こえていた音。

 

 

「ポーポーどしてぇ〜

ポーポーどしてぇ〜」

 

 

何回も繰り返すの。

 

 

なんだろうな〜って、

ずっと思ってた。

 

 

そしたらね。

 

つい最近。

 

会社へ行く途中で、

その音を聞いたのよ。

 

 

「あっ!」

 

ってなった。

 

 

懐かしい。

 

あの音だ。

 

 

そう思って周りを探したら、

道路脇の家から聞こえてる。

 

 

よく見たら、

鳥かごみたいなのがあってね。

 

そこに、

たくさんのハトがいたのよ。

 

 

そして、

あの声。

 

 

「ポーポーどしてぇ〜」

 

 

何十年も分からなかった音の正体が、

そこでようやく分かった。

 

 

だから、

もしかしたらね。

 

昔、

森の中から聞こえていた音も、

鳥だったのかもしれない。

 

YouTubeで見たら、

びっくりするような声で鳴く鳥も結構いるしね。

 

 

でも、

子どもの笑い声は、

結局なんだったんだろうね。

 

 

パパは今でも分からないのよ。

 

 

あれ、なんの音だと思う?

takeisan

ギャラクシー賞監督で現役のテレビディレクター。アナウンサーなどの採用面接官も務める。人口40万の市大会3位のMF。小中高の教員資格。週末は8歳の息子を追う「少年団パパ」。独自の観察眼で、少年団サッカーと将来の「選ばれる力」の意外な関係をドキュメンタリー風に綴ります。

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