夜、子どもたちと一緒に寝る時におねだりされることはありませんか?
「パパ、なんかお話して」
「お話?なんでもいいの?」
「いいよ、パパのお話おもしろいから」
そういう流れから、いつもパパのお話が始まります。
私が話すのは私が子どもの頃に見たり、聞いたり、体験したりしたことです。
だから嘘のような本当のような話が織り交ざっています。
パパのお話シリーズを記そうと思います。
注意してほしいのは、この話をすると子どもは寝ません。
「ねーねーなんでなんで?」
「もっと教えてよ」
「それからどうなったの?」という展開になり、
「もう!うるさ!はよ寝るよ!」と言って、みんなで寝ることになります。
子どもと一緒に寝ている保護者の方々のほんの参考になれば…。

パパはね、港町で育ったのよ。
漁船があって、堤防があって、テトラポットがあってね。
そこでよく魚釣りしてた。
エサはエビ。
100円か150円くらいで1パック買えたんだけどね。
そのエビがさ、1パックに100匹くらい入ってたんじゃないかな。
1パックあれば、5時間くらいはずっと釣りできたよ。
でもね、その100円が高くてね。
なかなかお小遣いもらえなくてさ。
1日10円だったかな。
100円貯めるのに10日。
150円なら半月。
本当はさ、早くお金ためてすぐ釣りに行きたいのに、
それだけ時間かかるからね。
あれ、もどかしかったよ。
釣りの道具もさ、シンプルなんだけど。
1000円あれば一応そろうくらい。
竿が500円、リールも500円くらいだったかな。
でも子どもにとってはね、
もう大金よ。
重りとか針とか、あとサルカンっていうのも買わないといけなくてさ。
結構、釣りにお金使ってた子どもだったと思う。
まわりでそこまでそろえてる子、あんまりいなかったな。
だからかな。
親戚のおじちゃんがね、
使い古した釣りセットを丸ごとくれたことがあったのよ。
たぶん、あいつ釣りばっかやってんなって思われてたんじゃないかな。
でね。
その日も、堤防に行ったの。
友達と一緒に。
浜田君とか、中居向君とか、山下君とか、いろいろいたな。
堤防って、けっこう高くてね。
10メートルくらいあったかな。
その上に立って、下にテトラポットが斜めに積んである感じ。
いつもやるみたいにさ、
堤防からテトラポットに飛び移って、
そこをぴょんぴょん飛びながら進んで、
隙間に糸垂らして釣るのよ。
カサゴとかベラとかね。
その日も同じように、飛んだんだけど。
そのときね。
一瞬、力が抜けたのよ。
「あれ?」って思ったときには、
もう体は空中にあるんだけど、全然進んでない。
足、届いてないの。
ちゃんと見えてるのよ。
「あ、届いてない」って。
で、そのとき思った。
「落ちるな」って。
次に思ったのが、
「これ死ぬな」って。
高さあるからね。
下に当たったら終わりだなって、子どもながらに分かった。
でね。
その直後。
気づいたら、堤防の上に立ってたのよ。
飛ぶ前の場所に、そのまんま。
足もまだ出してない状態で。
完全に戻ってた。
「あ〜助かった……生きてた……」
って思ったね。
時間がね、巻き戻った感じだったのよ。
友達、誰も見てなかったみたいでさ。
みんな普通に釣りしてた。
だから今でも思うのよ。
誰かが戻してくれたんじゃないかなって。
じいちゃんとか、ばあちゃんとか。
まあ、本当かどうか分からないけどね。
でもさ、
あのときの、足が届いてない感じとか、景色とかはね、
今でもめちゃくちゃはっきり覚えてる。
でね。
これで終わりじゃなくて。
その3年後くらいかな。
同じ場所で、中学生の先輩が亡くなったのよ。
野球部でね、運動神経も良かった人なんだけど。
海で「足つった」って言って、そのまま戻ってこなかったらしい。
みんな「なんでだろうな」って言ってた。
パパね、
ときどき思うんだよね。
あのとき、そのまま落ちてたら、
どうなってたんだろうなって。
これ、なんだったと思う?

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