チーム内で自分を出せない子はなぜ生まれるのか

“見る目”

少年サッカーの試合を見ていると、はっきりとした違いが見えてきます。


  • ボールに果敢に絡んでいく子
  • 声を出し、体をぶつけ、闘争心むき出しでプレーする子

一方で、

  • 少し距離を保ちながらプレーする子
  • 無理をせず、周囲を見て動いている子
  • 判断はしているのに、自分から前に出ていかない子

多くの親は、前者を見てこう思います。

「ああいう選手になってほしい」

チームに貢献しているように見えるからです。


しかし、冷静に見ていると気づきます。

👉 そうしたプレーをしているのは、チームの中でも数人だけ

多くの子は、その外側にいます。


試合中に見える“違和感”

試合中、こんなやり取りを見たことはないでしょうか。


「お前、何やってんだよ!」
「もっと前に出ろよ!」


強い言葉を、仲間にぶつける子がいます。

それに対して、

  • 言い返さない
  • 受け止めるだけ
  • そのままプレーを続ける

子どもたち。


その子たちにも考えはあるはずです。
でも、それを外には出しません。

👉 出さないのではなく、出せない


この状況を見ていると、ある構造が浮かび上がります。


チームの中にある“見えない序列”

チームの中には、

  • あの子はうまい
  • あの子は点を取る

という共通認識が自然と作られています。


そして、その「うまい子」の言葉には

👉 逆らいにくい空気が生まれる


これは偶然ではありません。


教育社会学者ジェームズ・コールマンは、

大人の評価や規範が曖昧な場では、
子ども同士の中で“非公式な権威”が生まれる

と指摘しています。


つまり、

👉 大人の評価が弱いほど子ども同士の基準が強くなる


なぜその子が主導権を握るのか

では、なぜその子が中心になるのか。

その理由は多くの場合、

👉 結果が出ているから


例えば、

  • 得点王
  • 目立つプレーが多い

子どもたちの世界では、

👉 結果は最も分かりやすい評価軸

になります。


さらにその子が、

  • 周囲を笑わせる
  • 空気を動かす

ことができる場合、

その影響力はさらに強くなります。


これは発達心理学の
「リソース・コントロール理論(Hawley)」でも説明されています。


この理論では、

子どもの影響力は、
「周囲を動かせた経験」によって強化される

とされています。


たとえば、

  • 強く言う
  • 指示する
  • ふざける
  • 場を盛り上げる

こうした行動は、大人から見ると問題行動でも、子ども同士の中では

👉 「集団を動かせた成功体験」

として積み上がっていきます。


なぜ叱られても変わらないのか

ここで疑問が出ます。

なぜ、注意されてもその行動は止まらないのか


それは、

👉 評価の基準が違うからです


社会心理学では、

人は、自分にとって重要な集団の評価を優先する

とされています。


この場合、

  • 大人の評価より
  • 仲間の反応の方が重要

つまり、

  • 叱られることより
  • 「場を動かせた」経験の方が価値が高い

結果として、

👉 行動は抑制されない


これは問題ではなく、

👉 環境に対する合理的な適応です。


では、なぜ自分を出せない子がいるのか

ここが本題です。


周囲をよく見ている子ほど、

  • 空気を読む
  • 関係性を考える
  • 衝突を避ける

傾向があります。


その中で、

  • 既に強い子がいる
  • その子が場を支配している

状況では、


👉 自分が前に出ない方が合理的


という判断になります。


これは、

  • 消極的だからでもなく
  • 勇気がないからでもない

👉 状況を正しく読んだ結果です。


小学生年代における「うまい」の正体

もう一つ重要な点があります。


大人の視点から見ると、小学生年代の「うまい・へた」には

👉 絶対的な差はほとんどありません


その状態は「良い」のか

ここで問いたいのはこれです。


👉 この構造を、そのままにしておいていいのか


それは言い換えると、

👉 子どもたちだけで価値が決まっている状態


本来、大人がやるべきこと

本来必要なのは、

👉 大人がもう一つの評価軸を示すこと


例えば、

  • 準備をする
  • 仲間を助ける
  • チャレンジする
  • 続ける
  • 努力をする
  • あいさつをする・・・など

こうした行動にも、

👉 明確な価値があると伝えられているか


これがない場合、👉 結果だけが支配するチームになる


小学生年代のサッカーは何を学ぶ場か

少年団のサッカーは、勝つことだけが目的ではありません。


  • 技術を学ぶ
  • 挑戦する
  • 仲間と関わる
  • 困難を乗り越える練習をする・・・など

👉 人としての在り方を学ぶ場でもある


それにも関わらず、「勝てばいい」という価値だけが残ると、


👉 大人が示すべき価値を、放棄することになります


最後に

チームの中で自分を出せない子は、弱いのでも、消極的なのでもありません。


👉 その環境に適応している子です


そしてその環境は、👉 大人がどう設計しているかで変わる


だからこそ指導者や親たちに問われるのは、


あなたは、どんな価値をチームの軸に据えるのか


だと思います。

takeisan

ギャラクシー賞監督で現役のテレビディレクター。アナウンサーなどの採用面接官も務める。人口40万の市大会3位のMF。小中高の教員資格。週末は8歳の息子を追う「少年団パパ」。独自の観察眼で、少年団サッカーと将来の「選ばれる力」の意外な関係をドキュメンタリー風に綴ります。

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