リモート画面に映ってしまう“忘れもの”。

“見る目”

以前、リモートでアナウンサー志望の学生を面接していた時のことです。
画面にパッと現れたのは、それはもう、さわやかな笑顔の女子学生でした。

「私の夢は、高校野球の実況をすることです!」
ハキハキしていて、頭の回転も速い。
おばあちゃんの応援を背に夢を追っているなんて、ストーリーも完璧。
「お、いい子だな」と、僕も最初は好感度マックスで話を聞いていました。

ただ、ふと気になってしまいました。
彼女の後ろの壁。

「そこ、どこ?」という違和感。

無機質な白い壁。
どう見ても、駅前とかによくある「リモートBOX」なんですよね。
これからの人生を大きく左右する、勝負の面接の日に、なぜ、そこ?
家とか、大学の静かな部屋とか、他にもっと落ち着ける場所、なかったのかなぁ。

画面越しに「時間に追われて、滑り込んできた感」がプンプン漂っている。
そんなことを思いながら、彼女が身振り手振りで熱弁を振るった瞬間、僕は「あること」に気づいてしまいました。

「……ねぇ、君。今日、ジャケットはどうしたの?」

私が尋ねると、彼女は一瞬、キョトンとして。
自分の肩を触って、数秒後、ニコリとやや顔を引きつらせながら…
「あ……! 忘れてしまいました……!」

才能の前に、まず「器」を整えること。

本人は、指摘されるまで気づいてすらいなかった。
それくらい、バタバタと余裕をなくして、その場に飛び込んだんでしょう。

性格もいいし、実力もある。
でも、一生を左右するかもしれない大事な15分のために、「余裕」を持って準備することができなかった。
これは、プロの現場ではちょっと致命的です。
実況席に忘れ物は持っていけないし、放送は1秒の遅れも許されませんから。

これ、少年団のサッカーでも同じですよね。
忘れ物をした子が「平気、平気!」と笑っている横で、親も「うっかりだね」で済ませちゃう。
でも、その「うっかり」は、ここ一番の勝負どころで、必ず顔を出します。

想像したら怖くなってしまった…

こういう子がどんなことをやらかすのか想像してしまいました。
放送ギリギリになって確認すべきゲストの名前の読みを確認していない。
スタッフは慌てふためいて自分の仕事を一旦ストップして、急遽確認しに行く。
そのスタッフがいなくなったせいでスタジオのリハが始まらない。
リハのために駆け付けたカメラマンやTDたちがイラつき始める。
当のその子はスタッフが確認してくれているからと別の自分の仕事をしだす。
それも結局はそれはそれまでにできていなかった自分の仕事。
性格も良くて人気者ですが、こういう人結構います。

放送を陰で支える職人たちからは信用されていないけれど。

「用意周到な不器用」は、天才を超える。

どんなに頭が良くても、その才能を載せる「器(準備)」がガタガタだと、結局どこかでこぼれ落ちてしまう。
逆に、不器用でも「これでもか!」ってくらい準備して臨む子は、やっぱり強いです。

準備を整える。当たり前だけど、一番難しい。

takeisan

ギャラクシー賞監督で現役のテレビディレクター。アナウンサーなどの採用面接官も務める。週末は8歳の息子を追う「少年団パパ」。独自の観察眼で、少年団サッカーと将来の「選ばれる力」の意外な関係をドキュメンタリー風に綴ります。新連載:原爆の謎を追いかけて 公開中

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