少年サッカーの試合を見ていると、
「声を出せ!」
という言葉をよく耳にします。
私自身も子どもの頃は、そう言われて育ちました。
そして実際に、大きな声を出す選手でした。
息子にも試合や練習の前には「もっと声を出そう」と言っていました。
でも最近、自分の息子を見ていて考えが少し変わりました。
ジュニア年代で本当に育てたいのは、声の大きさではなく、自分で考えて判断する力なのではないかと思うようになったのです。
そして、表現の仕方はその子にあったものがあるんだろうと。
私も子どもの頃は大声を出すタイプだった
私は子どもの頃、チームのキャプテンをしていました。
ポジションは中盤の真ん中。
いわゆるゲームメーカーのような役割でした。

監督からも、
「まずは(私)にボールを集めろ」
と言われていましたし、保護者たちからもかなり期待されていたと思います。
試合中もよく声を出していました。
「走れ!」
「当たれ!」
「もっと前に出ろ!」
「何やってんだ!」
そんなことを大声で叫んでいました。
当時はそれがリーダーシップだと思っていました。
大きな声で出していた言葉は監督やコーチが日頃言っているワードですね。
私は確かに声を出していました。
でも、本当に周りが見えていたかというと疑問です。
私が見ていたのは、主にボールとその周辺でした。
ボール保持者。
近くの味方。
近くの相手。
だから、指示の内容も限定的になっていたんだと思います。
今思えば、指示というよりも、不安や怒りを口に出していただけだったのかもしれません。
また、当時の監督やコーチがベンチから大声で指示を出していたので、それを無意識に真似していた部分もあったように思います。
息子は大きな声を出さない
一方で、うちの息子は大きな声を出すタイプではありません。
FWやウイングFWをよくやらされるのですが、
試合中も練習中もあまり大きな声は出さないし、怒鳴ることはありません。
チームの中には、
「もっと寄せろ!」
「何でそんなパス出すんだよ!」
と大きな声で指示を出している子もいます。
その姿を見ると、どこか昔の自分を見ているような気持ちになります。
でも息子は違う。
声を張り上げないのです。
だから最初は、
「もう少し声を出した方がいいんじゃないかな」
と思っていました。
ところが、よく見ていると面白いことに気が付きました。
息子はしばしば味方の近くまで歩いて行って、普通の会話の声で話しているのです。

怒鳴るわけではない。
命令するわけでもない。
本当に普通の会話です。
試合後に聞いてみた
ある日、試合の後に聞いてみました。
「何を話していたの?」
すると息子は当たり前のように答えました。
「ディフェンスが下がり過ぎていたから、もっと上がった方がいいよって」
「ボールがこっちにある時は、ディフェンスはもっと中に絞った方がいいよって」

正直、少し驚きました。
私が子どもの頃に見えていたのはボール周辺でした。
でも息子はFWなのにディフェンスラインを見ている。
しかも、その状況を味方に伝えている。
声の大きさで言えば、子どもの頃の私は息子よりずっと大きかったと思います。
でも、見えている範囲で言えば、息子の方が広かったのかもしれません。
その時に思ったのです。
これはなかなか良いことなんじゃないか、と。
これで良いんじゃないか、と。
サッカー先進国が育てようとしているもの
2026年FIFAサッカーワールドカップで優勝したスペインで、長年サッカーを取材し、現地の育成現場を見続けてきたサッカージャーナリストの小澤一郎さんは、スペインの強さは特別な練習法ではなく、育成の仕組みや環境にあると繰り返し語っています。スペインでは子どもたちがサッカーを好きなまま成長できる環境づくりが重視されているそうです。
また、スペイン女子1部リーグの監督経験を持ち、日本サッカーの育成にも関わってきた佐伯夕利子さんは、日本サッカーに必要なのは子どもを変えることではなく、まず指導者の質を高めることだと指摘しています。

考えてみれば当然です。
子どもに
「考えろ」
と言いながら、
大人がすべて答えを与える。
子どもに
「自主性が大事だ」
と言いながら、
試合中はベンチから細かく指示を出し続ける。
それでは自己判断は育ちません。
「声を出すこと」と「判断すること」は違う
もちろん、コミュニケーションは大切です。
サッカーは一人ではできません。
仲間との連携が必要です。
でも最近思うのです。
本当に大切なのは、
「もっと声を出せ」
ではなく、
「何が見えている?」「何を考えている?」
なのではないかと。
大声で
「走れ!」
と言うこともコミュニケーションです。
でも、
「ディフェンスラインを上げよう」
「中に絞ろう」
と自分なりに伝えることもコミュニケーションです。
そして後者には、
状況を観察する力が必要です。
課題を見つける力が必要です。
そして解決策を考える力が必要です。
私が息子に伝えていた「もっと声をだそう」という言葉は私のエゴだったと思います。

ジュニア年代で育てたい力
サッカーはよく、
認知・判断・実行のスポーツだと言われます。
ボールを蹴る技術は大切です。
走る力も大切です。
でもジュニア年代だからこそ育てたいのは、
自分の頭で考える力ではないでしょうか。
何が起きているのかを見る。
どうすれば良くなるのか考える。
そして仲間に伝える。
その積み重ねが自己判断につながっていく。
大きな声を出す子が悪いわけではありません。
静かな子が優れているわけでもありません。
ただ、
自分で考え、
自分で判断し、
その考えを仲間と共有できる。
そんな選手は、きっとサッカーだけではなく、その先の人生でも強いのだろうと思います。
ジュニア年代で本当に育てたいのは、
「指示待ちの選手」ではなく、
自分で考えて動ける選手なのかもしれません。


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