凍えるハーフタイムで…レモンティーが教えてくれたこと。

“見る目”

冬の少年団の活動は、
はっきり言って、修行に近いものがあります。

吹きさらしのグラウンドで、じっと立ったままの数時間。
ベンチコートを着込んでいても、足先からしんしんと冷えが上がってくる。
そんなとき、お母さんたちが差し出してくれた、
湯気のあがった、一杯のレモンティー。

あの、ほのかな甘さと、ちょうどいい温かさ。
凍えた指先から、じわじわと体温が戻ってくる感覚に、
ある「古い記憶」を呼び起こされていました。

小学6年生、「超冷泥水」だらけの冬。

僕が初めてレモンティーを飲んだのは、
小学6年生の、真冬の大会でした。

雨が降っていて、グラウンドはびしょびしょ。
僕らのチームはけっして強くはなかったけれど、
その日はなぜか3回戦まで勝ち進み、「あと2回勝てば市内優勝」という場所にいました。

たーだ、とにかく、寒いんです。
スライディングなんて、本当はしたくない。
だって、一度滑ればソックスも、ズボンも、パンツまで、
極寒の中で冷やされた「超冷水」の泥水が、一気に全身を包むから。

それでも、相手は容赦なく突っ込んでくる。
「もう、どうにでもなれ!」
泥の中に何度も体を投げ出しました。
ぶっ飛ばして、ぶっ飛ばされて。
髪の毛も顔も、全身がぐちょぐちょの、冷え冷え。

人生で初めての、あの味。

ハーフタイム。
ガタガタと震える僕の前に、差し出されたのが、
温かいレモンティーでした。

当時の僕には、レモンティーなんて未知の飲み物です。
はちみつレモンなんて商品も、まだなかった時代。
唇を青くして、ブルブル震える手でカップを掴み、一口。

……甘くて、酸っぱくて、最高に美味しかった。

あまりの旨さに、2杯くらい一気に飲んだかもしれません。
あんなに温かくて、救われるような飲み物があるんだ、って。
12歳の僕は、心の底から驚いたんです。

正直に言うと、その日の試合の結果は、もう覚えていません。
たぶん、負けたんだと思います。
でも、死ぬほど寒かった感覚と「レモンティー」という飲み物の強烈な美味しさだけは、
30年以上経った今も、鮮明に焼き付いている。

なぜ、あんなに「強烈に」記憶に残っているのか。
気になって、少し調べてみました。
すると、レモンと糖分の組み合わせには、驚くべき効果があったんです。

科学が裏付ける、あの「美味しさ」の正体。

  1. クエン酸の「エネルギー再起動」
    運動や寒さで体が疲弊すると、体内に「乳酸」が蓄積します。レモンのクエン酸は、この乳酸をエネルギーに変換するサイクル(クエン酸回路)を回す「着火剤」になります。(出典:農林水産省「クエン酸の効果について」)
  2. 糖分の「即効ガソリン」
    温かい紅茶に溶けた砂糖は、脳と筋肉のガソリンです。特に寒い時は体温を維持するために体力を激しく消耗するので、温かくて甘い飲み物は、いわば「命のスープ」に等しい価値がありました。
  3. 「感覚」と「報酬」の結びつき
    極限の寒さという「不快」な状態のときに、甘さと温かさという「快」の刺激が入る。すると脳の中でドーパミンが放出され、その瞬間の記憶が強烈に刻まれるのだそうです。

僕があの時感じた「最高に美味しい!」という感覚は、
体が本能的に求めていた、必然の反応だったんですね。

冬の雨の試合が来たら・・・

今度もし寒い日で、雨の中の試合があったら。
息子の水筒に「レモンティー」を仕込んであげようかな。
飲んだ瞬間の表情、どうなるのかめっちゃ気になります。
息子もまだレモンティー飲んだことないんで。


takeisan

ギャラクシー賞監督で現役のテレビディレクター。アナウンサーなどの採用面接官も務める。週末は8歳の息子を追う「少年団パパ」。独自の観察眼で、少年団サッカーと将来の「選ばれる力」の意外な関係をドキュメンタリー風に綴ります。新連載:原爆の謎を追いかけて 公開中

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