河川敷の「独り言」が、叫びに変わるとき。

サッカー

週末の少年団の試合。
保護者席に座っていると、ときどき、
空気がピリッと震える瞬間があります。

「あ〜……」
「なんでそうなる……」
「うわぁ……」

隣に座っているお父さんの口から、
ぼそぼそと、心の声が漏れ始めるんです。
ふだんは責任ある仕事に就いていて、
部下からも信頼されているような、シュッとしたお父さん。
まじめで、優秀な人ほど、この「独り言」の解像度が高い(笑)。

それが、試合が熱を帯びてくると、
だんだん我慢できなくなってくるんですね。

「おいおい!」
「集中しろよ!」
「なにやってんだー! このやろー!」

……最後は、立派な「怒声」になって、河川敷に響きわたります。

瞬間湯沸かし器の、その中身。

お母さんたちの中にも、たまに「プロ級」の方がいます。
ボールが子供のところに転がってきた瞬間、
まだ何もしていないのに「あんた! 何やってんの!」と叫んでしまう。

いやいや、まだ触っただけじゃん、と
心の中でツッコミを入れながら、僕は思います。
これ、子供にとってみたら、たまったもんじゃないよなぁ、って。

一生懸命やっているときに、一番味方でいてほしい親から、
100メートル先まで届くような声で怒られる。
やる気は、音を立ててがた落ちです。

でもね。
このお父さんやお母さんたち、
実はお酒の席では、最高に楽しくていい人たちなんです。
ふだんは、子供にたっぷり愛情を注いでいることも、知っています。

だからこそ、もどかしい。
「期待」という名前の重たい荷物を、
知らず知らずのうちに、子供の背中に乗せてしまっているんです。

一年かけて、たどり着いた言葉。

親として、どう声をかければいいんだろう。
この「もやもや」とした熱い思いを、
どうやって、ピッチの上の子どもたちに届けたらいいんだろう。

僕も、この問題で一万回くらい悩み、
河川敷でひっそりと「言葉のロケハン」を繰り返してきました。

それで、ようやくたどり着いたのが、
たった二つの、なんでもない言葉でした。

「〇〇ー、がんばれー!」
「〇〇ー、負けんなー!」

もう、これだけでいいんじゃないかな、と思うんです。

この言葉を試合中、本人たちに聞こえるように大きな声で叫ぶと、みんなめっちゃ走るし、めっちゃ頑張るんですよ。本気の顔で。やっぱり、親たちに良い所をみせたいもんね。

「演出」しない、という勇気。

テレビの世界では、ついつい「もっとこう動いて」とか
「こういう画が欲しい」と演出したくなります。
でも、少年団のサッカーは、僕の番組じゃありません。
主役はあの子で、台本を書くのもあの子自身です。

「がんばれ」と「負けんな」。
そこには、アドバイスも、否定も、期待の押し付けもありません。
ただ、「君がそこにいることを、僕は知っているよ」という
全肯定のサインだけがある。

120%の力を引き出してあげるのは、
たぶん、怒鳴り声じゃなくて、この「ただの応援」なんだと。

さて。
今週末の試合、僕の口から漏れるのは、
どっちの言葉になるでしょうか。
つい「あ〜……」って言いそうになったら、
深呼吸して、息子の名前を叫んでみようと思います。

みなさんは、どんなふうに声をかけていますか?
もし「魔法のフレーズ」があったら、こっそり教えてくださいね。


takeisan

ギャラクシー賞監督で現役のテレビディレクター。アナウンサーなどの採用面接官も務める。週末は8歳の息子を追う「少年団パパ」。独自の観察眼で、少年団サッカーと将来の「選ばれる力」の意外な関係をドキュメンタリー風に綴ります。新連載:原爆の謎を追いかけて 公開中

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