パパが子どもに話す、ちょっと不思議な話① あのときね、一回、死んだと思ってるのよ

パパが子どもに話す、ちょっと不思議な話

夜、子どもたちと一緒に寝る時におねだりされることはありませんか?
「パパ、なんかお話して」
「お話?なんでもいいの?」
「いいよ、パパのお話おもしろいから」
そういう流れから、いつもパパのお話が始まります。
私が話すのは私が子どもの頃に見たり、聞いたり、体験したりしたことです。
だから嘘のような本当のような話が織り交ざっています。
パパのお話シリーズを記そうと思います。
注意してほしいのは、この話をすると子どもは寝ません。
「ねーねーなんでなんで?」
「もっと教えてよ」
「それからどうなったの?」という展開になり、
「もう!うるさ!はよ寝るよ!」と言って、みんなで寝ることになります。
子どもと一緒に寝ている保護者の方々のほんの参考になれば…。

パパはね、港町で育ったのよ。

漁船があって、堤防があって、テトラポットがあってね。
そこでよく魚釣りしてた。

 

エサはエビ。
100円か150円くらいで1パック買えたんだけどね。

そのエビがさ、1パックに100匹くらい入ってたんじゃないかな。

1パックあれば、5時間くらいはずっと釣りできたよ。

 

でもね、その100円が高くてね。

なかなかお小遣いもらえなくてさ。

 

1日10円だったかな。

100円貯めるのに10日。
150円なら半月。

 

本当はさ、早くお金ためてすぐ釣りに行きたいのに、
それだけ時間かかるからね。

あれ、もどかしかったよ。

 

釣りの道具もさ、シンプルなんだけど。

1000円あれば一応そろうくらい。

竿が500円、リールも500円くらいだったかな。

 

でも子どもにとってはね、
もう大金よ。

 

重りとか針とか、あとサルカンっていうのも買わないといけなくてさ。

結構、釣りにお金使ってた子どもだったと思う。

 

まわりでそこまでそろえてる子、あんまりいなかったな。

 

だからかな。

 

親戚のおじちゃんがね、
使い古した釣りセットを丸ごとくれたことがあったのよ。

 

たぶん、あいつ釣りばっかやってんなって思われてたんじゃないかな。

 

でね。

 

その日も、堤防に行ったの。

友達と一緒に。

 

浜田君とか、中居向君とか、山下君とか、いろいろいたな。

 

堤防って、けっこう高くてね。

10メートルくらいあったかな。

その上に立って、下にテトラポットが斜めに積んである感じ。

 

いつもやるみたいにさ、

堤防からテトラポットに飛び移って、
そこをぴょんぴょん飛びながら進んで、

隙間に糸垂らして釣るのよ。

カサゴとかベラとかね。

 

その日も同じように、飛んだんだけど。

 

そのときね。

 

一瞬、力が抜けたのよ。

 

「あれ?」って思ったときには、

もう体は空中にあるんだけど、全然進んでない。

 

足、届いてないの。

ちゃんと見えてるのよ。

「あ、届いてない」って。

 

で、そのとき思った。

 

「落ちるな」って。

 

次に思ったのが、

 

「これ死ぬな」って。

 

高さあるからね。
下に当たったら終わりだなって、子どもながらに分かった。

 

 

でね。

 

 

その直後。

 

 

気づいたら、堤防の上に立ってたのよ。

 

 

飛ぶ前の場所に、そのまんま。

 

 

足もまだ出してない状態で。

 

 

完全に戻ってた。

 

 

「あ〜助かった……生きてた……」

って思ったね。

 

 

時間がね、巻き戻った感じだったのよ。

 

 

友達、誰も見てなかったみたいでさ。

みんな普通に釣りしてた。

 

 

だから今でも思うのよ。

 

誰かが戻してくれたんじゃないかなって。

 

じいちゃんとか、ばあちゃんとか。

 

まあ、本当かどうか分からないけどね。

 

 

でもさ、

あのときの、足が届いてない感じとか、景色とかはね、
今でもめちゃくちゃはっきり覚えてる。

 

 

でね。

 

 

これで終わりじゃなくて。

 

 

その3年後くらいかな。

 

同じ場所で、中学生の先輩が亡くなったのよ。

 

野球部でね、運動神経も良かった人なんだけど。

 

海で「足つった」って言って、そのまま戻ってこなかったらしい。

 

 

みんな「なんでだろうな」って言ってた。

 

 

 

パパね、

ときどき思うんだよね。

 

あのとき、そのまま落ちてたら、

 

どうなってたんだろうなって。

 

 

これ、なんだったと思う?

takeisan

ギャラクシー賞監督で現役のテレビディレクター。アナウンサーなどの採用面接官も務める。人口40万の市大会3位のMF。小中高の教員資格。週末は8歳の息子を追う「少年団パパ」。独自の観察眼で、少年団サッカーと将来の「選ばれる力」の意外な関係をドキュメンタリー風に綴ります。

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