サッカー日本代表が体現する「考える力」

“見る目”

─ それでも少年たちはなぜ辞めていくのか

 

サッカーワールドカップでの日本代表の戦いを見て、
「すごいな」と感じた方は多いのではないでしょうか。

オランダと互角に戦い、チュニジアには4-0で勝利。
結果ももちろんですが、試合の中身にも目を引かれました。

 

例えば、相手の強いプレッシャーを受けた場面。
ボールを持った選手が一瞬周りを見て、無理に前に運ばず、あえて後方へパスを出す。
それに合わせて周りの選手が自然とポジションを取り直し、次の攻撃につながっていきます。

 

目立つプレーではないかもしれません。
でもそこには確かに、

  • 周囲を見て状況を把握する力(認知)
  • 自分でプレーを選ぶ力(判断)
  • それを実現する技術(実行)

がそろっていました。

 

これは偶然ではなくて、日本サッカー協会(JFA)が長く大切にしてきた
「自分で考えてプレーする」という育成の考え方が、少しずつ実を結び始めているんだと思います。

 

ただ、その姿を見ながら、
少し気になることもありました。

 

実は、身近な少年サッカーの現場で、
まったく逆とも言えるような出来事が起きていたんです。

 

あるチームで、これから中心になるはずだった4年生の選手が、3人続けてチームを辞めました。

他の選手と大きな実力差があったわけではありません。
むしろ、これから伸びていくであろう選手たちでした。

 

理由を聞くと、こう話してくれました。

 

「怒鳴られて怒られると委縮してしまう」
「正解がない中で怒られるから分からなくなる」
「もう自分がどう動いていいのか分からない」

 

この言葉を聞いて、少し考えてしまいました。

 

日本代表の選手たちは、ピッチの中で自分で考え、判断しています。
でもその一方で、子どもたちは「どうすればいいか分からない」と感じてしまっている。

 

サッカーそのものはどんどん進化しているのに、
現場の指導は、その変化にうまく追いついていないかもしれません。
JFAの指導コンセプトがいまだ日本中には浸透しきれていないといってよいと思います。

 

 

怒ることが悪いわけではない

ここは少し丁寧に考えたいところです。

 

厳しく伝えることや、強く止めることが必要な場面は、たしかにあります。
安全に関わることや、明らかなルール違反などは、その典型です。

 

ただ、問題はそこではなくて、

 

👉 「分からない状態で怒られているかどうか」

 

ここにあるように思います。

 

子どもは、

  • 何が違ったのか
  • なぜ違ったのか
  • 次にどうすればいいのか

これが見えていれば、ちゃんと成長していきます。

 

でも、それが分からないまま否定だけが続くと、
少しずつ「考えること」をやめてしまいます。

 

 

昔の指導が成立していた理由

「昔は怒られても伸びた」

そう感じる方もいると思います。

 

それも間違いではなくて、
当時のサッカーは「型」や「正解」が比較的はっきりしていました。

 

  • こうトラップする
  • こうパスを出す
  • ここにポジションを取る

 

だからこそ、厳しい言葉の中でも「どこが違うか」が理解できたんだと思います。

 

 

いまは「考える競技」になっている

いまのサッカーは少し違います。
世界で戦うためにはよりサッカーを深く理解する必要が前提としてあります。

  • 状況が毎回変わる
  • 選択肢がいくつもある
  • 正解が一つではない

 

そんなサッカーという競技に求められているのは、

👉 自分で考えて判断する力

 

日本代表のプレーは、まさにそこを体現していました。

 

JFAが掲げている指導の考え方でも、
「正解を教える」のではなく、

👉 選手が自分で考え、判断できるようにすること

が大切にされています。

 

 

少年サッカーで起きているズレ

そう考えると、今回のケースは少し見え方が変わってきます。

 

  • 正解は示されていない
  • でも強く否定される
  • 評価の基準も分かりにくい

 もしかすると選手に思考を促しているのかもしれませんが、この状態では、

👉 子どもにとって“考える余白”がなくなる

 

結果として、

  • ミスを恐れる
  • 選択できなくなる
  • サッカーが分からなくなる

 

そして、

👉 辞める

 

という流れになってしまったんです。

 

 

親として見ておきたいポイント

こういうとき、どうしても

「うちの子に問題があるのかな」と考えてしまいがちですが、
少しだけ視点を変えてみてもいいのかなと思います。

 

  • なぜ注意されたのか説明できるか
  • 次にどうすればいいか分かっているか
  • 自分で考えようとしているか

 

このあたりが見えているかどうか。

 

もし見えていないなら、それは努力不足ではなく、
環境の影響を受けている可能性もあります。

コーチの指導、練習環境に問題があると思った方が良いです。

また、家でサッカーの話をしなくなったとしたら黄信号です。

 

どう関わるか

ただ、多くの親御さんの立場で言うと
「すぐに別のチームにはいけない」ということだと思います。
その場合、できることは少しあります。

 

例えば、家で少しだけ言葉を“翻訳”すること。

 

「違う!」と言われた場面を、
「どういう選択があったと思う?」と一緒に考えてみる。

 

答えを教えるのではなく、考えるきっかけを作る。

 

それだけでも、子どもがコーチの指導を前向きにとらえられることがあります。

 

 

最後に

怒られて伸びる時代は、たしかにあったと思います。

 

でも今は、

👉 考えられない状態で怒られると、伸びる前に辞めてしまう

 

そんな難しい時代になってきました。

 

子どもが辞める理由を、

「根性がない」で終わらせるのか。

それとも、

「環境が合っていなかったのかもしれない」と考えるのか。

 

その違いで、その子のサッカーとの関わり方は、
大きく変わっていく気がしています。

takeisan

ギャラクシー賞監督で現役のテレビディレクター。アナウンサーなどの採用面接官も務める。人口40万の市大会3位のMF。小中高の教員資格。週末は8歳の息子を追う「少年団パパ」。独自の観察眼で、少年団サッカーと将来の「選ばれる力」の意外な関係をドキュメンタリー風に綴ります。

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